コロナ禍で変わった街の風景

 コロナウィルスの感染が確認されてから、もう少しで2年になる。インフルエンザ程度に考え、1年あれば収束するだろうと考えていたが、甘かった。繰り返し発令された”社会行動宣言”の影響で、経済はどん底まで落ちてしまったが、果たして回復出来るのか、どのくらいの時間がかかるのか、不安が募る。

 

 高速道路沿いや新交通システム沿いで始められていたアパートやモール、オフィスビルの建設、駅前再開発などの建設工事が止まってしまった。再開をうかがわせる状態で休止している現場もあるが、クレーンなどの建設設備を撤去してしまい、建設を完全に放棄したと見える現場も多い。元々、建設中に企業者が倒産してしまい、計画が中止される事業も多かったが、最近では殆どの大規模工事が止まってしまった。

 ボゴールに1年前に開店した”イオンモール”は、モールに隣接して3棟の高層アパートが建設されていたが、1年前から進捗率80%位で工事が止まっている。イオンは賃貸していたモールの建物を買い取ったようだが、建物の一部は未完の状態である。元々、デベロッパーの資金不足で工事が遅れ、”イオンモール”の開店も1年遅れた。恐らく、コロナの影響でアパートの販売が計画通り進まず、資金不足に陥ったのだろう。既に販売したアパートの遅延補償金だけでも大金だろうと心配になる。

 

 一方で、公共工事の予算不足により出来高払いの遅延や新規工事の発注停止等により、建設業界は二重苦に晒されている。政府が肝いりで進めている”ジャカルタ~バンドン高速鉄道”や、”ジャカルタLRT”などの事業でも、資金不足を政府がカバーしているが、コロナ対策の予算が嵩み、十分な支援が出来ないようで、工事は継続されているものの、進捗は超スローペースになっている。工事現場が閑散として、寂しい。

 

 最近、屋台や移動販売、宅配サービスの店が急増している。会社の倒産、廃業などで失業した人達の生きるための起業である。コロナ対策の規制が緩和されるたびに、出店が増えている。ただ、商売する知識や能力のない人達が、安易な考えで起業するので、2か月もしない間に消えて行く。

 

 インドネシアでは、表で流通している通過量以上のお金が、裏で流通していると言われている。商取引や日常の生活の中で取得したコミッションを、税対策の為に現金で所持している人が多い。いわゆる”タンス預金”である。企業であっても個人であっても、銀行に預けると税務署に知られるので、これらの収入は税務申告しない。

コロナ禍の中で、今まさにこの裏のお金が使われ、インドネシア経済を支えているのだと思う。コロナ感染対策で規制されても国の支援の無い国が生きていけるのだから、善悪だけで判断してはいけないと思っている。