スマートフォン依存症

 私の妻(インドネシア人)が、スマートフォン依存症というか、スマートフォン中毒という状態になってしまった。元々、インスタグラム投稿、ビデオコール、ゲーム等に興じていたが、コロナウィルスの流行で外出自粛になり、友人との交遊が難しくなると、完全にのめり込んでしまった。

 朝起きるとすぐにスマートフォンをいじり始め、夜寝るまで延々と操作をしている。手放すのは、食事、入浴、トイレのときだけで、スマートフォンを操作する合間に生活している感がある。2台のスマートフォンを駆使し、交互に充電をしながら黙々と遊んでいる。時には、充電しながらも操作している。インドネシア人は、単純な事に熱中する性格だと思っているが、それにしてもよく飽きないものだと感心する。1日の起きている時間を15時間とすると、10時間以上はスマートフォンを触っているのだ。

 一番気になるのは、インスタグラムの投稿らしい。他人の投稿をチェックし、フォローする。自分の投稿に誰がフォローしているかを確認する。自慢好きのインドネシア人には、お誂えのアプリである。とにかく外出先、食事、ショッピングなどの自慢をして、優越感に浸りたいのだ。たまに妻と食事に行くと、料理が運ばれて来てもすぐに食べる事は出来ない。食べるのは、気に入った写真が撮れてからの話で、写真が旨く撮れないと、しばらく待たされる。特に、高級店に行った時は、念入りに撮影するので、待ち時間も長い。写真を撮ると即時に、インスタグラムに投稿し、今か今かとフォローされるのを待ちながらの食事になる。とても料理の味などは感じていないだろう。写真だけ撮っておいて、後でゆっくり投稿すれば良いと思うのだが、1分1秒でも早く投稿したいようだ。

 近所の妻の友人宅に、泥棒が入った事がある。数週間の内に2回も、それも日中だった。友人は一人住まい。1度目の被害の後、戸締りは厳重にしたという事だった。私の知り合いの刑事に話したら、一人住まいを知っている犯人が、何らかの方法で妻の友人のスマートフォンの番号を知り、インスタグラムやツイッター、フェイスブック等の投稿を見て、外出して家が無人の時間を察知したのだろう言っていた。リアルタイムで投稿すると、位置情報を知らせる事になり、留守を教える事になるのだ。

 ビデオコールは、孫や親戚などとの会話に使っている。インドネシア人話し好きなので、延々と30分以上も話している。ここでも、最近買った衣類やアクセサリーを映して、自慢話に花が咲くから、私から見ればくだらない事をだらだらとしゃべっているとしか思えない。とにかく、朝起きてからその日に会った事の一部始終を話している。従って、お互いの家庭の内情がそこら中に拡散してしまうのだ。日本では、親子、兄弟であっても、余り家庭の内情までさらけ出す事はないのだが。インドネシアでは普通であり、家庭内の出来事が、数日のうちに隣近所まで知れ渡る所以である。

 妻はインターネットのゲームにものめり込み、夜遅くまで遊んでいる。無料のゲームをダウンロードして遊べば良いものを、ネットのゲームをするので、スマートフォンの使用料が2万円以上になる。これを無駄とは思わない妻に腹を立てている。また、テレビや新聞を見なくなり、スマートフォンで入手したフェイクニュースに踊らされる妻を見て、やり場のない怒りを覚えている。これもコロナ禍だろうか。