生き方、考え方

 インドネシア人妻と30年以上を過ごし、高齢者になった私は、日本人とインドネシア人の生き方の違いを感じている。生き方の違いとは、気質、感性など国民性の違いと宗教から来ていると思っている。

 

 仕事や行事などの計画・予定を話したり、指示したりしていると、相手から「ムダムダハン」という言葉が度々発せられる。「出来得るならば」という意味で使われる。この言葉を聞くと、私は真剣に努力する意志が無いと受け取ってしまう。物事に取り組む前に、結果が想定されてしまうのだ。イスラム教徒には、自分に起きる事を含めた将来の事は、「神のみぞ知る」といった認識がある。従って、公私共にこれから取り組む事は、やってみないと分からない。神の加護があるかどうか分からないという事らしい。

 

 以前、乗員乗客全員が死亡した航空機の墜落事故が発生した際、当時の大統領が、「神が我々に与えた試練だ」と言ったニュースを見てびっくりした事がある。日本であれば、「航空機の発見と原因究明、再発防止に全力を挙げる」と言うと思う。航空機の

墜落場所が発見されたが、水深が深く膨大な費用がかかるという事で引き上げは断念され、原因究明や再発防止策もうやむやのまま終わった。

 

 神の加護により生かされている、運命も神の成せる技、死は神の元に行けることであるという考えである。付き合いがある近所の家庭でも、夫を無くしたり、息子を亡くした人がいるが、葬式などでも日本人ほど悲しまない。1週間もすれば、元気な姿が見える。死因や不幸をいつまでも引きずらない。多分、「神の元へ行ったのだから」と考えているのだろう。

 

 自分で健康に注意し、事故に注意し生きているのではなく、「神に生かされている」のだから、明日の事は分からない。生死も分からない。だから、今日を目一杯、楽しく過ごすのが第一である。明日の仕事など考えず、休日の深夜まで遊んでいる人が多いのだ。日本人には、決して真似が出来ない生き方だ。