デビィ夫人とスナックで一杯

 友人の紹介でデビィ夫人と食事をし、話すうちにすっかり夫人の魅力に取りつかれてしまった。自分の歩んできた人生の出来事を、飾ることなく、その時のその時の感情を交えて話してくれる。生きるためとはいえ、自分には想像できない波乱万丈の人生を、初対面の私に話してくれる事が、うれしく楽しかった。

 食事を終えて、帰宅するのかと思ったら、「今日は楽しいから、スナックへ行きましょう。私の友人にも会いたいから。」と言い、私の車に乗り込んで来た。そして、私の友人に言った。「あなたの車は飽きたから、〇〇さんの車に乗る。」 そして、ジャカルタでは老舗のスナックへ向かった。この店は、ジャカルタに住む日本人なら誰でも知っている、有名な日本人ママがいる店だった。明朗会計の店で、その夜も混んでいたが、ママさんがデビィ夫人のために席を用意してくれた。

 デビィ夫人と席に着くと、近くの席にいた先客が気が付いて、「デビィだ!デビィだ!」と大きな声で叫んだので、スナック内の全ての客の知るところとなってしまった。私がドギマギしていると、今度はデビィ夫人が大声で怒鳴った。

夫人;「貴方、私を呼び捨てにするなんて、失礼な人ね!」

客 ;「・・・・・・・」

夫人;「皆さんは私のことを“デビィ夫人と呼んでくれます。」

客 ;「・・・・・・・」

夫人;「何処の会社にお勤め? 名乗りなさいよ!」

客 ;(名刺を出して自己紹介し、失礼を詫びている。)(大手飲料メーカーの現法の

    社長だった。

夫人;「名前だけは有名な会社だけど、大した会社じゃないわね! 貴方みたいな失礼

    な人が社長では。」

客 ;(そそくさと、店を出て行った。)

 礼儀を重んじ、全くブレない人生を歩むデビィ夫人の魅力は計り知れない。スナックでは、夫人の著書の裏話を聞かせて貰い楽しく過ごした。スナックを出て、車に乗る前には足を止め、大きくお辞儀をして、「ご馳走様でした。楽しかった。」と言って帰っていった。かなりのアルコールが入っているのに、全く酔った言動がない。すごい人である。テレビでデビィ夫人の姿を見る度に、思い出している。