中国が建設を進める高速鉄道の問題点

 日本が提案し、受注が確実視されていた案件を、横取りする形で受注した中国。用地買収の遅れや施工計画の不備により、完成時期の遅延や予算不足などが発生している。開業しても40年以上は黒字転換にならない。この間、毎年国家予算を投入する事になり、国家の大きな負担になるのは目に見えている。G20の会議に併せて計画された、周近平主席を招いての試乗セレモニーが中止になり、ジョコ大統領も面目丸つぶれとなった。現在の進捗率は80%、しかし、2023年6月には開業させると言っている。日本の常識的な試運転期間から考えると、とても開業できる工期ではないが、ここはインドネシア、なし崩し的に開業の形に持っていくだろう。開業後のトラブル発生は必至であり、安全性の保証も担保されない。

 

 そもそも、高速鉄道計画は、安部元首相がインドネシア訪問の際に、手土産げとして借款の話しを持ってきたらしい。企画に関与したコンサルタントに聞くと、もともと採算の取れる計画では無かったと言う。インドネシアの経済状況等を考えても無謀な提案だったようだ。私も、在来線さえ十分整備されていないのに、巨額の費用を投入してまで部分的・短距離の高速鉄道を建設する意味があるのかと、思ったものだ。

 

 中国は、潤沢な資金をあらゆる国に投資し、負債の回収が出来なくなると、色々な権益を取得するという戦略で海外進出を続けているが、日本政府にはそのような真似は出来ない。何故なら、国民性、気質が違うからだ。借款を付与する相手国の国民性、気質を十分理解した上で、正論が理解される範囲内で支援するしかない。インドネシアには国を思う政治家はいない。自分の利権のためにしか働かない。そのような条件下で、立案・提案するプロジェクトを形成するのは、非常に難しいと思うが、ODAを継続するためには、やらねばならないだろう。JICAは、優秀な民間のエンジニアを雇用し、まずは政治的な意向を入れないで、プロジェクトの企画に取り掛かるべきと考える。

 

 私は30年以上、インドネシアで鉄道工事に携わってきた。日本政府の援助で、本当に必要なプロジェクトが進んで欲しいと願っている。