母校の不祥事に腹が立つ

 日本大学の理事長が脱税容疑で逮捕された。日大事業部の病院建設をめぐる不正取引で理事が逮捕された時から、予想されていた事だが、在校生・卒業生にとっては非常に腹の立つ事件である。

 私は、逮捕された理事長の一学年後輩で、昭和45年に理工学部を卒業した。昭和44年、45年に卒業した者は、当時の”日大闘争”を経験している筈である。当時の日大の会頭による使途不明金問題がきっかけとなり、学生と大学側との間で発生した”学園紛争”であった。学生側は自治会を中心にした組織、大学側は経営陣に体育会系のクラブ組織が加勢して対立、大学封鎖、警官隊・政治セクトなどが介入して、死傷者が出る紛争になった。最終的には、会頭をはじめとする経営陣が退陣して紛争は収まった。

 私は、この紛争中に、3年生、4年生を過ごし、満足に専門課程の勉強もしないままに、卒業した。就職にあたっては、私生活まで調査をされて審査された。ただ”日大闘争”は、純粋な学内紛争であった為に、政治色が薄く、マスコミなどの批判が殆どなくて、闘争とは言え好意的にみられていたのが幸いした。

 半世紀余りが過ぎて、再び発生した”不祥事”に愕然としている。逮捕された理事長は、当時の”日大闘争”を経験している筈である。あの時、何が原因で、どんな影響が出て、どのような対策を講じたのか全く忘れているのではないか。教育の本質を忘れ、株式会社”日大”で利益を追求し、私欲を肥やすなどもっての外である。日大の名声はどん底まで落ちてしまった。在校生や卒業生が今後被る不利益は大きい。

 半世紀前の大学を思い出してみると、当時と現在があまり変わっていないように思われる。応援団を始めとする体育会系のクラブが優遇され、大学側の手足となって活動していた。学内を特権階級の素振りで闊歩していた。反社会主義勢力の組織に似ていると思っていた。体育会系クラブ出身の理事が多いのは当然である。会頭、理事長、理事などの顔を見るたびに恥ずかしい思いがする。アメフト部の問題でクローズアップされた監督やコーチを含めて、皆、反社会勢力の顔をしている。教育者の知性ある顔ではない。恥ずかしい。

 私は、大学受験の際、自分の能力にあった、卒業生のなるべく多い大学として、日大を選んだ。先輩・後輩が多ければ、社会生活のなかで、自分に有利になると考えたからである。間違ってはいなかった。社会人となって、国内外で仕事をしたが、どこに行っても先輩・後輩がいて、助けたり、助けられたり、日大卒に満足していた。今回の事件で、日大の名声が汚され、後輩たちに不利となる”日大卒”になってしまうことを、心配している。真に教育を考える理事や教授たちが奮起して、意識改革をして欲しいと願っている。